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福岡地方裁判所 平成4年(わ)869号 判決 1992年12月24日

本籍

北九州市門司区柳原町三番地の五

住居

同市八幡西区鷹見台三丁目一〇番九号

会社役員

金尾博

昭和一九年九月二九日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官玉岡尚志出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

一  被告人を懲役一年二月及び罰金一、五〇〇万円に処する。

一  右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

一  この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、呉服小売業及び不動産賃貸業を営んでいるものであるが、自己の所得税を免れようと企て、呉服の小売による現金売上や不動産賃貸収入の一部を除外して仮名で預金するなどの方法により所得を秘匿した上

第一  昭和六三年分の実際所得金額が四、九四四万二、八一一円(別紙(一)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、平成元年三月一三日、北九州市八幡東区平野二丁目一三番一号所在の所轄八幡税務署において、同税務署長に対し、昭和六三年分の所得金額が一三六万五、二〇二円で、これに対する所得税額が二万七、九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額二、〇二七万八、五〇〇円と右申告税額との差額二、〇二五万六〇〇円(別紙(二)税額計算書参照)を免れ

第二  平成元年分の実際所得金額が四、九〇五万八、九三二円(別紙(三)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同二年三月一三日、前記税務署において、同税務署長に対し、同元年分の所得金額が二五六万九、九八三円で、これに対する所得税額が五万六、二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額一、九六二万五、五〇〇円と右申告税額との差額一、九五六万三〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)を免れ

第三  同二年分の実際所得金額が四、七〇三万五、一一四円(別紙(五)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同三年三月一三日、前記税務署において、同税務署長に対し、同二年分の所得金額が一五六万八、四〇四円で、これに対する所得税額が六万四、三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額一、九一五万五、〇〇〇円と右申告税額との差額一、九〇九万七〇〇円(別紙(六)税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する各供述調書

一  収税官吏の被告人に対する各質問てん末書

一  収税官吏作成の脱税額計算書説明資料

一  収税官吏作成の各査察官調査書

一  押収してある所得税確定申告書三枚(平成四年押第一八二号の1ないし3)

(法令の適用)

被告人の判示各所為は、いずれも所得税法二三八条一項に該当するので、所定刑中懲役刑と罰金刑とを併科し、以上は、刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑につき同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑につき同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、右加重した刑期及び合算した金額の範囲内で被告人を懲役一年二月及び罰金一、五〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

(量刑の理由)

本件は、呉服小売業や不動産賃貸業を営んでいた被告人が、呉服の小売による現金売上や不動産賃貸収入の一部を除外するなどして、三期にわたり合計約一億四、〇〇〇万円余の所得を隠匿し、約五、九〇〇万円の所得税を免れたという事案であるが、継続的、計画的に行われていること、逋脱率が各年度とも九九パーセントを超え、極めて高率であること、強制調査の段階では、罪証隠滅工作に及んでいること等に照らすと、犯情は芳しくなく、国民の基本的義務である納税義務を故意に免れた点において非難に値する。

しかし、被告人は、公判廷においては事実を認め、真摯な反省の情が窺われること、既に修正申告を済ませ、本税、重加算税、延滞税ともに納付済みであること等被告人に酌むべき事情も認められるので、これらの事情を総合考慮すると、被告人を主文の刑に処した上、懲役刑については刑の執行を猶予するのが相当である。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 金山薫 裁判官 井口修 裁判官 甲斐野正行)

別紙(一) 修正損益計算書

<省略>

修正損益計算書

<省略>

修正損益計算書

<省略>

修正損益計算書

<省略>

別紙(二)

<省略>

別紙(三)

修正損益計算書

<省略>

修正損益計算書

<省略>

修正損益計算書

<省略>

別紙(四)

<省略>

別紙(五)

修正損益計算書

<省略>

修正損益計算書

<省略>

修正損益計算書

<省略>

修正損益計算書

<省略>

別紙(六)

<省略>

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